精神科医を目指す医大生の備忘録

精神科に興味あるけど、どうやって勉強したらいいかわからない。という悩みを解決するために医師国家試験を解説しつつ、勉強していくことにしました!一般の方でも解けちゃったりするので、ぜひともお付き合いくださいませ!

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実は高齢者の耳元で大声で話すのはダメ!?~老人性難聴について

大声で話すと、普通の人以上にうるさく感じることも!

前回の記事では、先週からスタートした「俺の家の話」というドラマで登場した学習障害について書きました。

www.d-lemon.site

 

今回も、「俺の家の話」の第一話に登場したシーンについて考えてみたいと思います。

 

第一話では、西田敏行演じる観山寿三郎(高齢者)が、荒川良々演じるケアマネージャー(介護職の一種)さんから介護保険に該当するかどうかの認定調査を受けるシーンがありました。

 

その中で、「ケアマネージャーが西田敏行の耳元で大声で話しかけた結果、西田敏行が音の大きさにびっくりする」というシーンがありました。

 

西田敏行演じる観山寿三郎は、

「なぜ耳が聞こえにくいはずなのに、大声にびっくりしてしまったのでしょうか?」

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難聴なのに、大声がうるさいのはなぜ?


今回はその医学的な理由を書かせていただきます。

 

まずは医師国家試験にチャレンジ!

いつも通り、まずは老人性難聴に関係する医師国家試験を解いてみましょう。

医師国家試験 第103回E4
老人性難聴の患者への対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
a 近づいて普通の大きさの声で話す。
b 補聴器のボリュームをできるだけ上げる。
c 患者の興味のある話題を選んで話しかける。
d 高い音のチャイムで食事の時間を知らせる。
e 音声を介したコミュニケーションを避ける。 

正解はこちらをタップ

正解はaとcです!

リクルートメント現象ってご存知ですか?

年を取ると高い音が聞こえにくくなる!

一般に、人間の耳は30~20,000Hz(正常音域)の周波数の音を聴くことができます。

 

ただ年を重ねるにつれ、老化によって正常音域が250~8,000Hzに縮小するとされます。

 

周波数が小さいのが低い音、周波数が大きいのが高い音なので、

高齢になるほど高い音が聞こえにくくなる

ということがわかりますね。

 

逆に若い人は高い音が良く聞こえます。これを利用したのが公園などに設置されている「モスキート音」の発信機ですよね。

 

あれは、若者だけが聞こえる高周波の「蚊の飛ぶ音」を発生させることで、若者だけが不快に感じて、夜遅くに公園などでたむろさせないようにするという仕組みです。

リクルートメント現象とは?

さて、本題のリクルートメント現象ですが、これは別名で聴覚補充現象とも言います。

 

これは、

音が小さいときは聞こえないが、

一定の音量を超えたとたん急激に大きい音に感じる

という現象です。

 

すごい迷惑な現象ですよね。

 

なので、ドラマのワンシーンにあったように老人性難聴の患者さんの耳元で大声を出すと、話し手が想定した以上に患者さんは大きな音だと感じて、驚いたり不快に感じてしまいます。

 

近づいて普通の大きさの声で話すのが重要

私自身、医学部に入って勉強するまで知らなかったのですが、

実は難聴の高齢者の前で大声で話すのは、医学的に誤りなんですね!

 

医学的に適切な対応としては、近づいて普通の大きさの声でゆっくり話すということが重要です。

 

コロナ禍の状況では、マスクを外すのが難しいかもしれないですが、可能なら口元が見える方が難聴の方も理解しやすいですね。

 

リクルートメント現象の原因は、内耳という耳の構造の障害と推定されていますが、詳しいことはわかっていないようです。

 

最後に医師国家試験問題の解説!

老人性難聴の患者さんに適切な対応を2つ選べという問題でしたね。

各選択肢を見ていきましょう。

a 近づいて普通の大きさの声で話す。

⇒これが一つ目の正解です。リクルートメント現象があるので、大声で話すとかえってうるさく感じます。普通の大きさ(あるいは普通より少し大きめ)で、近づいてゆっくり話すのが適切でした。


b 補聴器のボリュームをできるだけ上げる

⇒補聴器のボリュームを上げると、リクルートメント現象が起こりやすくなるので不快に感じてしまうので、ダメですね。これはリクルートメント現象を知らなければ選んでしまうひっかけ選択肢ですね。

 

c 患者の興味のある話題を選んで話しかける。

⇒2つ目の正解です。難聴になると、患者さんは話が聞こえないという理由で会話をしないようになります。そうすると耳の機能だけでなく、会話をしないことで日常生活での刺激が少なくなり、認知症などのリスクが高くなるとされます。

ですので、興味のある話題を選ぶことで、積極的に患者さんに話してもらうようにするというのは、患者さんの老化防止という観点から重要です。

 

d 高い音のチャイムで食事の時間を知らせる。

⇒老化すると高い音は聞き取りにくくなるので誤りです。

 

e 音声を介したコミュニケーションを避ける。 

⇒これは選択肢cに記載したように誤りです。耳が聞こえにくくなっても、なんとか工夫をして積極的にコミュニケーションを取り続けることが重要です。

 

一人一人に合った、声の大きさを見つけるのが大切!

私自身、「高齢者は耳が聞こえにくいので、大きな声で話すべき」と思って育ってきました。

 

ですので、ドラマのワンシーンのように「高齢者の耳元で大声で話しかける」というのが日常生活でもまだ行われているかもしれません。

 

ただ、繰り返しになりますが、高齢者の難聴の方では、

音が小さいときは聞こえないが、

一定の音量を超えたとたん急激に大きい音に感じる

というリクルートメント現象が生じます。

 

よって、「相手の反応を見つつ、適切な声の大きさでゆっくり話しかける」というのを心掛けるのが個人的には重要かと思います。

 

なかなか「俺の家の話」というドラマは医学的な視点から見ても勉強になっておもしろいですね。

認知症の検査もしていたので、また別の機会に認知症のスクリーニング検査についても取り上げてみたいと思います。

 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!

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